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生徒会オールメンバーで運動会イベントのお話、選手宣誓編。

* * * * *




選  手  宣  誓




『あーあー、本日は晴天なり』
薄く秋の雲がたなびく快晴の空の下、スピーカーから底抜けに明るい声が響きわたった。
『はーいみなさん、おはようございます!生徒会長のミレイ・アッシュフォードです!え~、本日はお日柄もよく・・・』


「・・・なにが晴天だ・・・雨でも降ればよかったのに・・・!」
全身から不機嫌オーラを漂わせながら、ルルーシュは体育倉庫の扉を力任せに開け放った。
薄暗い倉庫に太陽の光が差し込み、雑然とした用具の山を照らし出す。
「まったくスザクの奴が余計な事を言うから・・・」
「まあまあ、あいつも別に悪気があったわけでもないしさ」
「当たり前だっ、あってたまるか!」
入口を塞いでいたカラーコーンを八つ当たり気味に蹴り飛ばし、ルルーシュがずかずかと体育倉庫に踏み込む。
苦笑いを浮かべながら、リヴァルがその後に続いた。
「全く、なんだこれは!ライン引きはどこにあるんだ!?」
「なあ、そんなに怒るなよ~、会長のお祭り好きは今に始まった事じゃないだろ?」
乱雑に積まれた用具を前に、いつにもまして苛立つルルーシュをリヴァルがなだめる。
暢気に響く声に、ルルーシュが小さく肩を震わせながら振り返った。
「ただのお祭り騒ぎだったらまだいいさ、今回は運動会だぞ!?ナナリーなんか、今週はずっとふさぎ込んで・・・」
「ああ、ご機嫌斜めはやっぱそれが理由か。それなら会長が、」
リヴァルが笑いながら口を開いたところで、ルルーシュの背後でごとりと嫌な音がした。
物音に振り向いた瞬間、山積みにされていた用具ががらがらと音を立てて崩れ落ちる。
狭い倉庫の中に埃と白い石灰の粉が舞い、二人は揃って盛大に咳き込んだ。
「うわあ、どうなってんだこれ、ひっでーな!」
「・・・それを言いたいのはこっちの方だ!くそっ、俺はこんな下らない事をしている暇なんかないのに・・・!」
ルルーシュがとうとう癇癪を起こしかけた瞬間、立ちこめる白い煙の向こうから天使の声が響いた。
「お兄様、ここにいらっしゃるのですか?」
「ナナリー!?」
薄い靄の向こうから、車椅子の少女がゆっくりと姿を現す。
現れたナナリーはいつもの中等部の制服ではなく、チアガールの衣装を身につけていた。
ゆるいウェーブの長い髪はポニーテールにまとめられ、白いリボンが結ばれている。
「ナナリー、その恰好は・・・」
「うふふ、どうですか?お兄様」
両手に持ったふわふわのボンボンを揺らして、ナナリーが笑顔で首を傾げた。
「ルルーシュ様、ナナリー様は白組の応援団長なんですよ。ミレイ様が取りはからってくださって」
車椅子の後ろに控えている咲世子もスポーティなジャージ姿で、頭には白のハチマキを結んでいる。
「ずっと内緒にしていてゴメンなさい、お兄様を驚かそうと思って」
悪戯っぽい表情を浮かべてナナリーがくすくすと小さな笑い声を上げた。
「この一週間、ナナリー様はずっとこの運動会を楽しみにしてきたんですよね」
「ええ、今日はいいお天気で本当によかった!」
いつになくはしゃいだ様子のナナリーに咲世子が優しく目を細める。
ナナリーは嬉しそうにボンボンを抱きしめると、ルルーシュに向き直った。
「お兄様・・・お兄様は赤組と白組、どちらですか?」
「え?ああ、俺は白組だよ」
ジャージのポケットに突っ込んでおいたままのハチマキを慌てて取り出し、ルルーシュが答える。
「まあ、では私と一緒なんですね!」
「それじゃあ、頑張って応援しないといけませんね、ナナリー様?」
「ええ、もちろん!私、一生懸命応援しますから、お兄様も頑張ってくださいね!」
「あ、ああ・・・そうだね」
それではまた後で、と言い置いて咲世子が車椅子を押すと、ナナリーがボンボンを掲げて手を振ってみせた。
二人の姿が遠ざかり、体育倉庫は元の静寂と埃っぽさを取り戻す。
薄暗い倉庫の中、ぼんやりと立ち尽くすルルーシュの肩をリヴァルが軽く叩いて言った。
「なっ、ほら大丈夫だろ?会長にぬかりないって。さあ早くライン引き探して、俺たちも戻ろうぜ」
「・・・ダメだ・・・俺は、こんな事をしている暇はない・・・」
「おいルルーシュ、まだそんな事・・・」
「・・・今すぐ赤組のデータを揃えて作戦を立てなくては・・・学校のデータベースから全赤組生徒の体育の成績とクラブ活動のデータをハッキングできるはずだ!」
「はあ!?」
低く呟かれる声に、傍らに立ったリヴァルが顔をひきつらせる。
ルルーシュは顔を上げると宙の一点を見据え、瞳に強い意志の力をこめて高らかに宣言した。
「どんな手を使ってでも・・・俺は・・・ナナリーのために、白組を優勝させてみせる・・・っ!」
「・・・どんな手、っておまえなぁ、」
「ではリヴァル、後は任せる」
「ええっ!?ちょっ・・・任せるって・・・おい待てよルルーシュ!」
打倒赤組の計画を一瞬にして練り上げた黒の皇子は、白いハチマキを握りしめ、颯爽とした足取りで体育倉庫を後にする。
慌てたリヴァルが転がるようにして倉庫を出ると、その背中は既に校舎の影に消える所だった。
「スポーツマンシップは!?フェアプレイ精神は!?・・・ていうかライン引きはどうすんだよーっ、このシスコン!」
爽やかな秋晴れの空の下、開会を告げる花火の音と共にリヴァルの悲痛な叫び声が響き渡った。



<07-10-07>
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